研究の概要 その4

てんかん発作が起きると脳内ではどのような変化が起こるのか?

てんかんは、脳内の特に大脳という部位に異常がおこり、その結果として特徴的なてんかん発作という症状を引き起こす疾患です。てんかんは、臨床的症状や脳波のパターンの違いによって分類されており、治療薬も発作の種類により異なっています。欠神発作はてんかん発作のなかの1つであり、けいれんのような激しい症状を起こすことはありませんが、急に意識の消失が起こったり、今まで行っていた行動が急に停止するなどの症状を呈します。欠神発作は、脳内の大脳皮質と視床という部位の間にある神経ネットワーックが異常に興奮を起こして、この神経回路が勝手にぐるぐると回ってしまうことが原因と考えられていますが、どのようなメカニズムで起こるのかということや発作が起こると神経細胞のなかでどのような変化が起こるのかということは不明でした。これまで本研究室では、ヒトの欠神発作とよく似た発作を起こすマウスを使って、この動物が発作を起こすと大脳や視床の神経細胞核のDNAの転写というレベルまでその情報が伝わるっていることを明らかにしました。このDNAレベルの変化が、結果としてどのようなタンパク質合成に関係しているかは現在不明ですが、発作を抑制したり、発作によるダメージを保護するための物質が作られるようになることも考えられるので、今後さらに研究を進めることによって新薬の開発にもつながると考えています。

欠神発作と細胞内情報伝達

欠神発作に伴う細胞内の変化の模式図。細胞外からの刺激は、細胞内で様々な過程で処理されるが、欠神発作の際には、その刺激がCREBやAP-1と呼ばれる転写調節因子により核内に伝えられることが明らかとなりました。

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